やがて永遠になる

「跡部が休みぃ!?」

向日の叫びに対して樺地はいつもどおり「ウス」と答えた。
学校を休むなど珍しいこともあるものだ、今日はきっと槍が降るぞ。
跡部をよく知るレギュラー達は、普段なら上記のような軽口を叩いただろう。
だが彼らは軽口を言うどころか沈黙した。表情も暗い。
皆、病気の事を思い出したのだ。
発症すれば死亡する、謎の病気の事を。

「なあ、跡部が休みなのってさ、まさか例の…?」
「…ウス。」

樺地は今朝方、跡部家の使用人から話をきいたらしい。
使用人の話によると、跡部は昨晩帰宅した時から既におかしい状態だったそうだ。
心ここにあらずと言ったようにぼうっとしている。
目もとろんとしていて焦点が定まらない。
明らかな"症状"が現れていた。
使用人達はすぐさま医者を呼び、診察させたが原因は不明との事。
そして例の病気にかかっているのは間違いない、との事だった。

「大事をとって…しばらく休ませる…そう、です…。」
「そうか。ほなら今日皆で見舞い行こか?」

忍足の提案に樺地は首を振った。

「うつすかもしれない…から……面会謝絶…だ、そうです。」
「はぁ!?うつるのかよ??」
「『かも』って言うとるやろ。…原因もわからんし、病気が流行っとるのは確かやし…。しゃあないやろ。」
「…〜っ!…大丈夫なのかよ?跡部の奴………。」

向日の呟きで全員が再び沈黙する。
発症すれば死亡する病気。大丈夫だとは到底思えない。
そんな暗い空気を払うように忍足が明るく言った。

「…まあ、あの王様相手なら病気のほうが逃げてくやろ。俺らはそれを待ってよか。」

願いもむなしく、後日、彼らへ悲報が伝えられる事となる。

跡部が自室にて息を引き取った、と…。