EP 0 プロローグ

朝一番に流れる全国ネットのニュース番組。そのニュース内で毎朝放送される王様の挨拶の時間。
今日のこの時間、彼の挨拶は全国の少年少女の視線を釘付けにした。

『本日より7日間リアル鬼ごっこを開催します。対象は全国の中学と高校のテニス部に所属する生徒です。男子も女子も関係ありませんからね。みんなで鬼ごっこ会場まで移動してもらいます。只今迎えの兵士を派遣しましたから指示に従ってくださいね。間違っても逆らったりしないように。逆らったらその時点で反逆罪になりますからね。ああ、荷物はいりませんよ。』

「リアル鬼ごっこ…?」

いつものように朝練に遅れないよう早起きしていつものように制服に着替えていた彼はいつものようにわけのわからない挨拶をしている王様が口にした耳慣れない言葉に一連の動作を止めてテレビを凝視していた。

「鬼ごっこって言ってたから鬼ごっこなのかな…?テニス部って…会場に移動するとか言ってたな…移動……?」

思考に耽っていた少年の耳に玄関のチャイムの音が届いた。

混乱しながらも「きっと自分を迎えにきたんだろう」とその考えがすんなりと浮かんで足は自然と玄関に向かいゆっくりとドアを開けた。
ドアの外に立つのは軍服をきっちりと着て帽子を被り無精髭を生やした男。彼の後ろには武装した兵士と大型バスが見えた。
男は威厳たっぷりに、そしてあたりに響き渡るほどの声ではっきりと告げた。

「大日本王国政府の者である。王様の命により貴殿を連行する。抵抗する場合は射殺もやむなしとの命を受けている。」

男がそこまで告げた時、後ろに立っていた数人が持っていた銃を玄関に向けて構えた。
だが銃を向けられても彼には抵抗する気などなく、どこか上の空で男の話をきいていた。

「氷帝学園中等部2年 鳳長太郎。間違いないな?」

「…はい。」

「共に来てもらうぞ。バスに乗れ。」

彼--鳳は男に促され身一つのままバスへ向かった。
出る時にいつものように「いってきます」と挨拶を残して。