短編集

*俺達と部長の朝

「「越前部長!お早うございます!!!」」
「…ああ、お早う。桃、菊。」

朝から元気に挨拶してきたのは元気が取り柄の2年レギュラー、桃城武。
その後ろにいるのは得意のアクロバティックで1年にしてレギュラーの座についている菊丸英ニ。

「桃センパーイ、部長に遭っちゃったってことはヤバくないっすか?」
「ヤベぇな、ヤベぇよ。…うわっ!5分前だ!!!」
「…ちょっと。人つかまえて「ヤバイ」はないんじゃないの?」

軽く睨みながら言ってやれば後輩2人は顔を見合わせ、めをぱちくりさせた。

「だって越前部長はいっつもギリで登校してるじゃないっすかー。」
「そうそう。俺達は先輩を見かけたら遅刻寸前っていう目印にしてるにゃー♪」
「…ほんと生意気なやつら。」

そう言いつつ校舎に向かって歩き出す。後輩達も楽しそうについてきた。

「遅刻しそうなんじゃないの?俺についてきていいの?」
「いいっすよ♪部長はいつも『遅刻しそうでしない人』だって事もちゃーんと知ってるんすから。」
「そうそう。部長に合わせれば俺らも遅刻しないで済むにゃ♪」
「…あっそ。勝手にすれば。」
「「勝手にするっす!!!」」

3人並んで仲良く正門を抜ける。本鈴2分前だからか、正門付近には誰もいない。
ここでリョーマが立ち止まって振り向いた。

「そういえばさぁ、俺、今日はもともと用事で遅れるって連絡してあるんだよね。」
「「……はい?」」
「俺を目印にしてるところ悪いんだけど、今日はいつもより5分遅く歩いてたから。」
「「…。」」
「レギュラーが遅刻とかみっともないことしないよね?」

先輩の突然の爆弾発言で後輩達の表情は一転、青ざめたものに変わる。
2人は頬をひきつらせながら校舎の正面に備え付けられている時計を見た。
時刻はまもなく本鈴1分前に代わろうとしていた。
のんびりだべっている場合ではない。

「~~っ!部長!お先っす!!!!」
「あっ!先輩!!!…俺も失礼するにゃっ!!!」

いち早く桃城が駆け出し、菊丸はその背を追い、校舎へと疾走する。

「まだまだだね。」

2人を眺めて口癖を呟くと、リョーマは部室へ向かい歩き出した。

▲モドル

*名前

「ぶちょー、なんで部長は俺のこと『エージ』って呼んでくんないの?」
「なんでって……深い意味はないけど。」

部活のため着替えていた所に1年の菊丸が挨拶をしながら部室へ入ってきた。
「ああ、早く着替えなよ、菊」と返事をしたら彼はちょっと拗ねたような顔になって質問してきたのだ。

「しいて言うならアレかな。うちの猫に似てるから。」
「猫?部長、猫飼ってるんですか?」
「うん、カルピンって名前。カルって呼んでる。」
「カル…。」
「『菊』も似てるよね。語感っていうかさ。」
「それでエージの事を菊って呼んでるんすか?」

桃城がワイシャツを脱ぎながら話に割り込んできた。
彼らだけではなく部室内では多くの部員が着替えをしていた。
すでに着替えをすませ、熱心にノートをとっているのは1年の乾。
普段は自分の事を話さない部長の話に興味津々といった具合だ
データを収集してゲームをコントロールする彼のプレイスタイルはリョーマも認めるところではあるが、さすがに飼い猫の情報など、テニスではまったく役に立たないと思う。

「俺は猫じゃないにゃ!」
「なーに言ってんだよっ!猫みたいににゃーにゃー言ってるくせに。」

声につられてリョーマが視線を戻すと、桃城が菊丸の頭をわしわしと撫で構い倒していた。
手をどかそうと自身の腕を振りながら「セットが崩れるー!」などと抗議している菊丸の姿は、ねこじゃらしにじゃれるカルピンにそっくりで自然と笑みが溢れた。

「部長、何ニヤニヤしてるんすか!助けてくださいよ~。」
「桃、そろそろ部活はじまるから。」
「ウィーッス。」

リョーマが注意すると桃城は菊丸をかまうのをやめて着替えを再開した。
解放された菊丸はというと「もー」と少し口元を尖らせながら両手で髪を撫で付けている。
ぐしゃぐしゃになった髪を整える様は猫の毛繕いのようでリョーマを噴出させた。

「ううっ!?なっなんすか!部長、笑うなんてしつれーにゃ!」
「あはは、ゴメンゴメン。…うん、やっぱり菊は『菊』だね。」
「…それは俺が部長ん家の猫っぽいってことにゃ?」
「カルはもう少しだけお利口だよ。」
「あー!部長ヒドイ!ヒドイにゃ!!!」

菊丸がむ~っと口を膨らませて怒ると部室内は明るい笑いに包まれた。
周りを見渡して菊丸もつられて笑う。
ある晴れた日の青学部室内の出来事。

▲モドル

*いつだってトラブルを持ち込むのは部長なんだ

顧問の竜崎の号令で、部員全員がコート内で整列した。
竜崎は部員達の正面に立ち、他校との練習試合を組んだことを知らせた。

「練習試合?氷帝と??」
「そうだ。今年はいい1年が多いからな。お前達の力を見るにはうってつけの相手だ。」
「うってつけって…。ソレ所のレベルじゃないっすよ~。」

竜崎の言葉に堀尾が弱々しい声で反論する。

「シャッキリしな、堀尾!お前それでもレギュラーかい?」
「うっ…。」
「あのー!氷帝ってそんなに強いんですかぁー?」

元気よく手をあげて2人の会話に口を挟んできたのは菊丸だ。
その菊丸の言葉に竜崎が返答するより先に手塚が話しだす。

「名前を聞いた事はある。全国区の強豪校だと。」
「ぜっ…全国!?」
「ああ、それに氷帝の部長は昨年の優勝校・立海大の真田に匹敵する強者だ。」

乾がノートを片手に持ち前のデータを披露すれば菊丸は若干引き気味になった。

「う~…。そんな強いトコと練習試合かぁ~…。オレも出んのかな~。」
「レギュラーなんだから当たり前デショ。菊、びびってるの?」
「ぶ、部長…。び、びびってない!です、にゃ。」

菊丸は後ろから優しく肩を叩かれてそちらを振り返った。

「大石。」
「落ち着いていけば大丈夫だよエージ。頑張って!」
「そうだよ!エージは1年レギュラーの1人なんだからさ!!オレすっごく応援するから。」
「タカさん…。」
「あ、その事なんだけど…。」

リョーマが口を挟む。

「今回は1年メインでいくから。」
「「「えっ…?」」」

思いがけない言葉に菊丸や大石、河村のみならずコート内の全員が驚愕した。

「今年は有望な1年が揃ってるからね。チカラを見てみたい。今からオーダー発表するから。
…まず、D2が乾と河村」
「ええっ!!?俺!!!!?」
「ふむ、D2とは一体どういう意図が…。」
「ああ、あまったから。」

さらりと言うリョーマの言葉に全員が内心つっこんだ。
乾は「理屈じゃない…」と崩れ落ちていた。
リョーマは部員達の様子を無視して次々とオーダーを発表する。

「D1は菊丸・大石、S3は海堂、S2は不二、S1は手塚、補欠は桃城!」
「えー!俺補欠っすかー!」
「言ったでしょ?今回は1年主体でいくって。俺だって出ないんだし文句言わないでよ。」
「ウーッス…。」
「部長、よろしいでしょうか?」
「何?手塚」
「本当に部長は出られなくて宜しいのですか?大事なS1を俺なんかに預けてしまって。」
「いいってば。今回は力試しだし。」
「そうですか。」
「そ…そっか、力試しって事は向こうも1年って事かにゃ!」

リョーマの言葉をきいて少しだけ元気を取り戻した菊丸が勢い良く訊ねた。
それに対しリョーマは「いや」と言うと口の端を上げて菊丸を見た。

この瞬間、部員の背中には嫌な汗が流れた。この部長が笑う時というのはロクな事がないのだ。
リョーマはやはり期待を裏切らず(期待してないしできれば裏切って欲しいが)とんでもない事を口にした。

「跡部にはレギュラー出してって頼んだし。けっこー挑発したからマジでくるんじゃない?」

何してくれてんだドアホーーーーー!!!!

口にこそ出さなかったものの部員の心の叫びは見事に一致していた。

「…それじゃあきっと相手はすごく怒るかもね」

ぽつりと零しただけの不二の呟きが何故かコート全体に広がり、部員達はさらに固まった。
ただ1人、リョーマだけは愉快そうに笑っている。

「だろうねー。知っちゃったらきっとカンッカンだろうね。」
「はわわ…。どうするんすか…?」
「別にどうもしないけど?1年だろうがなんだろうが強い方が勝つだけじゃん?」
「それは…。」
「ま、皆頑張ってね。期待してるからさ。…さって、そろそろいこうかな。」
「どちらへ行かれるのですか?」
「校門。跡部達を迎えにね。」

………はい?

今聞いてはいけない言葉を聞いた気がした。
瞬時に理解してしまった手塚は眉間に皺を寄せてため息をついた。
苦い顔をする者、青い顔をする者、未だに意味を理解できずに疑問符を浮かべる桃城と菊丸。
リョーマは彼らの顔を見て面白そうに笑うと口元をつりあげて不敵な笑みをみせた。

「今から試合だよ。氷帝と。何の為に土曜のこんな朝早くから集合かけたと思ってんの?」

それだけ言うとリョーマは「じゃあね」と手を振ってコートを出て行ってしまった。
ぽかーんと見送っていた桃城と菊丸がようやくリョーマの言わんとする事に気付いて同時に叫び声をあげたのは、彼が出て行ってちょうど30秒後の事だった。

▲モドル

*部長同士仲がよろしいことで

場所は青学の正門前。ユニフォームを着た集団が立っていた。
ユニフォームは青学選手のものではない。袖は薄水色で右肩にラインが入っている。青学選手のユニフォームと比べると控えめなデザインだと思う。
ユニフォームを着て静かに佇む集団は傍目に見れば確かにお坊ちゃん学校に通うだけのことはある上品な生徒達に見えた。
彼らを迎えにきたリョーマが近づくまでは。

リョーマの姿を見つけ、集団の中の1人が前へ進み出た。

「遅ぇ!!呼び出しておきながら待たせるたぁいい度胸してるな?越前。」
「アンタにはさすがに負けるよ、跡部。」
「いやいや、自分らいい勝負しとるわ。」
「あぁ?何だと?忍足。」
「はいはいそこまで。試合前に体力つかってどうすんの?」

あやうく喧嘩になりかけたところを仲裁したのはサラサラヘアーの美少年。名前は滝萩之介。
だが確か彼はレギュラーではないはず。今回呼んだのはレギュラーだけなので疑問が溢れた。

「…何でアンタがいるの?」
「あ?萩之介は測定担当だ。連れてくるに決まってんだろ。」
「アンタには聞いてないし。」
「ほらほら、俺の為にケンカしないで。時間と体力がもったいないよ。…越前、コートへ案内してくれるかな?」
「はいはい…。」


リョーマが氷帝の選手を連れてコートに戻ると、コート内が一気にざわめきだした。

「チッ、うるせえな。ここは保育園か?越前?」
「アンタんとこの試合中の応援に比べたら静かなもんでしょ?」
「お、おいおい越前。なんで早速跡部にケンカ売ってんだよ!!」
「堀尾も大変だな…。」
「宍戸~!!!わかってくれるか!俺の苦労!!!」
「まあ、さすがにな…。」

口喧嘩している部長達の隣で苦労人同士気持ちをわかちあっていた。

そんな彼らを含めて氷帝レギュラーをじっくりと観察している一団があった。
今回対戦する1年生達だ。

「あれが氷帝レギュラー…。」
「部長と喧嘩してる人が氷帝の部長だ。名前は跡部景吾。部長同様全国区プレイヤー。プレイスタイルはオールラウンダー。誕生日は10月4日。」
「乾、誕生日はどーでもいいにゃ…。」
「しかし、誕生日を知っていれば占いに役立つぞ?相手との相性が最悪ならば事前に警戒…。」
「それってどこのキセキの人だよ。」

ぴしゃりと菊丸が突っ込む。微妙に手塚の肩が揺れたのは気のせいだろうか。
乾はズレたメガネの位置を直しながら跡部を見据え、ぽつりと呟いた。

「…そして、手塚。恐らくお前の対戦相手になる。」

言われて手塚も跡部を見ると挑戦的な視線を察した跡部が振り向いた。

「…随分と生意気な奴らだな。見た事はねえが…1年か?」
「ああ、彼らがアンタ達の対戦相手になるから。よろしくね。」
「!?っはあ?おい越前、そりゃどー言う事だ!!」

叫びながら2人の元へきたのは向日岳人。
小柄な身体をこれでもかというほど思いっきり揺らして全身で怒りを表現している。
他の氷帝メンバーは静かなものの、訝しげな視線と表情。向日と同様に快くは思っていないことが窺える。

「別に、そのまんまの意味だけど?今回の試合は俺じゃなくて彼らが相手ってこと。」
「…お前ら帰るぞ。」

跡部の一言で氷帝陣はぞろぞろと歩き出す。彼らの後ろからリョーマが声をかけた。

「逃げんの?」
「あーん?」
「1年に負けるのが怖い?そりゃそーだよね、万が一にも1年に負けたら氷帝の恥さらしだよね。」
「…ってめっ!黙ってきいてれば!」
「よせ宍戸。」
「けどよっ!!!」

挑発に乗り怒る宍戸を跡部は止めた。

「越前。俺達はお前らレギュラー陣と試合をする為にわざわざここへ来た。それなのにどうだ?対戦相手は入学ホヤホヤの1年だと??お前は『面白い試合が出来る』と言ったな?それがこれか?」
「そうだよ。」
「こんなガキと試合して俺達にメリットはない。時間が惜しいんでな、帰らせてもらう。」
「そうでもないよ?オレが『面白いから』って理由だけでわざわざアンタ達を呼ぶと思う?」

帰りかけた跡部の足が止まった。リョーマは帰すまいとさらに続きを話す。

「俺だってアンタ達の実力は認めてんだよ。さすがにテニス初心者のピッカピかの1年を相手させられるようなレベルじゃないってこともわかってるつもりだし。アンタ達にとっても決してマイナスにはならない試合が出来ると思うけど?」
「……そいつらはお前が認めるほどのテニスを出来るということか?」
「少なくとも、退屈はさせないと思うよ?」

リョーマはニヤリと挑戦的に微笑む。跡部はリョーマを見た後1年生を見渡してやがて自分を力強く睨みつける視線と交わった。
その視線は跡部と交わるとよりいっそう強くなった。
自分を真っ向から見て目をそらさない人間など久しぶりだ。跡部は興味を惹かれて話しかけた。

「お前、名は?」
「人に名前を尋ねる時はまず自分から名乗るものですよ。」
「ハッ!生意気な1年だ。オイ越前、コイツお前にそっくりじゃねーの。」
「そお?わりかし似てないと思うけど?」
「部長に似てる、か、そりゃ言えてるっすよ跡部さん!!」
「…桃、何笑ってんの。」
「うおっ!すんません。」

桃城が割り込んだことで若干、空気が軽くなった。
相変わらず氷帝陣の視線は冷たいものの、跡部の態度が先ほどより柔らかくなったせいか、青学陣はホッと胸を撫で下ろした。

「まずは自分から名乗るもの、か。…いいぜ、教えてやる。3年の跡部景吾だ。お前は?」
「青学1年、手塚国光です。」
「手塚、か。お前S1か?」
「はい。」
「お前が相手ということか。……越前、この試合受けるぜ。」
「跡部!!」

途端に氷帝側から抗議の声がとんだ。
それはそうだろう、何故自分たちがわざわざ1年なんかと試合をしなければならないのか。
跡部自身、それに納得いかないから試合放棄しようとしたのではないのか。
だが跡部は仲間達の声は無視して直も越前に話しつづける。

「つまらねえ試合しやがったら承知しねえぞ。」
「へー、どう承知しないの?」
「それはつまらねえと感じた時に教えてやる。もっとも試合を放棄して氷帝へ引き揚げるほうが先だろうがな。」
「そっか。じゃあその答えを知る事は出来なそうだね。試合は長引くだろうからきちんと準備したほうがいいよ?」
「フン…。」

跡部はベンチへ向かって歩き出した。彼に従順な樺地も当然の如くその後を追う。
未だ納得のいかない氷帝陣はリョーマと青学陣を睨みつけて、しぶしぶ跡部を追いかけた。

「これは面白い試合になりそうだね。」
「……部長、試合すんの俺達なんですけど……。」

氷帝陣を見て楽しそうに笑う部長に対し、氷帝と対決するという大役を担った上ハードルまであげられてしまった1年組は数分後の試合を思い盛大なため息をついた。

▲モドル

*西のルーキー

少年と出逢ったのは全国大会の会場だった。

「コシマエ。」
「……は?」

なんか赤いものがちらついてると思ってそちらを向いたら、見覚えのあるユニフォームを着た、赤い髪の小さな男の子が立っていた。
彼はリョーマと目が合うと指を差して冒頭の台詞を言ったのだ。

「ワイ、あんたんこと知ってます。コシマエやろ。」
「何それ。俺そんな名前じゃないけど。」
「嘘や!ワイ試合みとったもん!アンタの名前コシマエやったもん!!」

そういうと少年は自分のズボンのポケットから、くしゃくしゃに丸まった紙を取り出して広げた。
上から辿るようにしてゆっくりと指を滑らせ何かを探している。
目的のものはほどなく見つかったようだ。「あった!」と指を止めそのまま見せて来た。
見たところ、どうやら個人戦のトーナメント票のようだ。
羽のように広がった線の先に、うっすらと人名のような物を読み取れた。

「ここ!これアンタの名前やろ!?」
「ん~?」

顔を近づけて見てみるも、しわのせいで文字もかすれかすれ。見づらい事この上ない。
よくよくみると少年が指し示す先には「越前リョーマ」の文字。
リョーマは文字を見て大きくため息をついた。

「……呆れた。漢字も読めないのか。」
「読めとるもん!コシマエコシマエコシマエ~!!」
「エチゼンって読むんだよ。バカ。」
「エチゼン?何や言いづらいわ。コシマエでええやろ。」

良いわけがない。人の名前を勝手に変えるな。
それに先ほどからタメ口をきかれているが、彼は背が低くあどけない顔立ちをしており、中学生か小学生にしか見えない。リョーマは3年生。彼は間違いなくリョーマより年下だ。

「よくないし。……ていうか君小学生?何なのその言葉遣い。」
「誰が小学生や!ワイの名前は遠山金太郎!!中1や!!」
「冗談だよ。そのユニフォーム、白石んトコのでしょ。白石はどういう教育してんだか…。
ねえ、君にはさ、先輩に対する敬意ってものがないの?」
「ケイイ?…って食えるんか?」
「……おこちゃまには難しかったね。」
「誰がおこちゃまや!!ワイ怒ったでぇー!勝負せぇ、コシマエ!!」

金太郎は両手を振り回してムキーッと地団駄をふむ。
これは面倒な事になりそうだ。とっとと用事を済まして帰るが吉。
そう考えたリョーマは金太郎を無視して自販機の前に立った。
小銭を機械に放り込み、ポンタグレープのボタンを押す。

リョーマはジュースの缶とおつりを取り出し口から出すと、再度小銭を機械に投入した。
そして未だにわめいている金太郎へ視線を向ける。

「ねえ、アンタは何が好き?ジュース。」
「ワイ?…ワイはオレンジや!」

適当にオレンジジュースのボタンを押すと、ガコン、という音を立ててジュースが落ちて来た。
リョーマは取り出し口からそれを取り出すと、きょとんとしている金太郎に渡してやった。

「ほら、それあげるから飲んで落ち着きな。」

缶を渡された金太郎は缶とリョーマとを見比べていたが、リョーマの言葉をきいてパッと笑顔になった。

「…くれるん?おおきに!!コシマエおおきに!!!!」
「だからコシマエじゃないっての…。」


財前&白石が金ちゃんを引き取りに来ました。
(力つきたので会話文で書きたいとこだけ書いた)

白石「まったく金ちゃんは!ちょっと目ぇ話したら消えてしまいよってからに…。」
遠山「だってコシマエ居たんやもんー!!」

財前「越前さんちわっす。」
越前「うん。」

財前「はぁー。越前さんみたいなクールな人憧れるっすわぁ…。うちの白石部長なんかアレやし…。」
白石「おーい、財前くん?聞こえとんでー?」

越前「そーいえばさ。白石ってさ、しらいしくらのすけって名前だよね?」
白石「せや。それがどないしたん?」
越前「いや…。しらいしなのか、くらいしなのか迷うんだよね。」
白石「…は?」

財前「あーそれちょっとわかりますわぁ。時々『くらいしさん』って呼びそうになるんですわ。」

白石「…はぁ。」
越前「白石、なに暗くなってんの?」
遠山「ぎゃはははは!白石が暗いしー!!」
財前「金ちゃん、そのシャレは色々アカン。」

▲モドル